近年、SaaSの普及が進んでいく中で、カスタマーサクセスという職種を聞く機会が増えてきました。
カスタマーサクセスはSaaS企業のほとんどが取り入れている職種であり、ここ数年、これから伸びる職種として注目されています。
しかし、カスタマーサクセスの定義をきちんと理解している企業はまだ少なく、カスタマーサクセスといっても、企業によって、業務の内容や期待される役割に差があるのが現状です。
本記事では、カスタマーサクセスの解説から始まり、SaaSを運用している企業のカスタマーサクセスの実例を紹介します。ぜひ、最後まで読み進めて頂ければ幸いです。
- 自己分析から内定獲得まで徹底的にサポート
- 一次面接通過率約50%(選考企業ごとの面接対策実施)
- 入社半年以内の離職率1%以下
目次
カスタマーサクセスとは?

カスタマーサクセスとは、直訳すると「顧客の成功」という意味です。提供するサービスを通じて、顧客を成功に導くためのサポートと、それによって企業が得る報酬の増加(売上アップ)を目的として営業活動する職種を指します。
近年、市場の消費活動が「所有」から「利用」へと変化し、高価なモノやサービスを購入するのではなく、必要なタイミングで必要な機能だけを選択するサブスクリプションが普及しています。
SaaSも例外ではなく、月額コストは低く、顧客に継続して利用してもらうことで、利益を得る仕組みになっています。
そのため、顧客に自社サービスを継続して利用してもらうことが重要になり、顧客が自社サービスを利用した成功体験を実感させることが必要になってきました。
そこで注目されるようになったのがカスタマーサクセスです。
海外では、すでにカスタマーサクセス部門として、独立させて業務を行うのが一般的です。カスタマーサクセスの重要性は、SaaSだけではなく、他の業界にも広がりを見せています。
現在、伸びていると言われている消費者に直接サブスクリプションサービスで販売を行うD2C業界、月々の料金が発生する金融・保険・クレジットカードやコンサルティングなどを始め、定期的に購買が起こるB2Bでの食品・飲料業界・製造業界・小売業界といった様々な業界にカスタマーサクセスの重要性が広がっています。
カスタマーサクセスの役割
カスタマーサクセスは、顧客の成功を能動的にサポートすることが主な役割になります。
具体的な役割は、以下の4つです。
・顧客生涯価値(LTV)の向上
・解約率(チャーンレート)の減少
・プロダクトやサービスの改善
・継続利用する顧客の増加
1つずつ見ていきましょう。
顧客生涯価値(LTV)の向上
LTVとは、Life Time Value(ライフタイムバリュー)の略称です。顧客から将来的にどのくらいの利益を得られるのかを計測する指数として扱われています。
顧客の成功に貢献し、信頼関係を築こうとするカスタマーサクセスの活動は、LTV向上につながります。
LTVに影響を与える要素は、「顧客単価」「購入頻度」「継続期間」の3つです。
この3つの数値を上げる為に、アップセルやクロスセルを意識し、顧客単価の向上を狙い、顧客との関係を維持しながら良いタイミングを見計らってアプローチすることが購入頻度を上げる為には、重要になります。
また、継続期間の向上はSaaSのようなサブスクリプションモデルのビジネスでは、最も重要と言われており、常に課題を見つけ出して、改善する姿勢と解約や乗り換えが起きやすいタイミングでキャンペーンや特典を提供するなど、顧客の動向を日頃から把握しておかなければなりません。
解約率(チャーンレート)の減少
解約率(チャーンレート)は、「顧客離脱率」や「退会率」とも呼ばれており、有料会員から無料会員への切り替えも含みます。
SaaSのようなサブスクリプションモデル型の料金形態が主なサービスで利益を上げるには、新規契約を増やすよりも、現在契約中の顧客の解約を防止することが大切です。
サービスが解約される理由は「サービス・製品に満足していない」「期待していた程効果がでなかった」等、不満に感じている点が挙げられます。
そこで、カスタマーサクセスが日頃から顧客が不満を抱かないように、フォローする必要があります。
プロダクトやサービスの改善
サービス・製品利用者と接する機会が最も多いのがカスタマーサクセスです。時には顧客から直接、「このような仕様にして欲しい」と要望を言われることもあるでしょう。
しかし、それをそのまま自社に持ち帰って開発チームに伝えても結果的に反映されません。
なぜなら、要望の理由や背景等、より深いところまでヒアリングして、精査した上でフィードバックしなければ改善には結びつかないためです。
顧客のニーズを拾いながらそれを参考にプロダクトやサービスの改善点を導き出し、より良い製品を作り上げる為の情報として社内へフィードバックすることで、開発面にも貢献しています。
継続利用する顧客の増加
顧客の満足度を高い水準で維持して、継続利用していただければ、より高単価なプランを契約してくれる可能性があります。
また、既存顧客が関連部署や他の企業に、口コミで自社製品を広めてくれるかもしれません。
つまり、顧客との関係を維持することで、新規顧客獲得のためのマーケティング活動をローコストで行えるのです。
カスタマーサクセスの企業事例
カスタマーサクセスで成果を出している企業はいくつもあります。今回は、5つの企業のカスタマーサクセス事例をご紹介いたします。
・Adobe株式会社
・Slack Technologies Inc
・Sansan株式会社
・株式会社ベルフェイス
・株式会社SmartHR
企業の取り組みを見ていくと、カスタマーサクセスを成功させるためには、ヘルススコアの設計を整え定期的にアップデートをすることや、顧客との接点を増やし、顧客の声を全社に伝えて反映していくことが大切です。
SaaSサービスでの継続率向上や、CRM構築等にお悩みの方はパキシーノといった専門的な企業に依頼するのもありかもしれません。
Adobe株式会社の成功事例
Adobe株式会社は、画像関連ツールやPDFを中心に、世界中にユーザーを持つ企業です。
アドビはこれまで売り切り型のビジネスモデルでしたが、2011年よりサブスクリプション型のビジネスモデルを導入し、徐々にサブスクリプション型に移行していきました。
これまで売り切り型では50万円近くしたサービスが、月額5000円で使用できるということで、利用者数は、以下のように増加しました。
出典:https://www.adobe.com/investor-relations/financial-documents.html
また、カスタマーサクセスチームによる顧客向けの勉強会や定期的なアップデート、複数製品を導入している場合は、製品間の連携に関する手厚いサポートを行うことで、年間解約率は約10%となっており、サブスクリプション型への移行×カスタマーサクセスによって売上を順調に伸ばしています。
アドビではカスタマーサポート部門もありますが、カスタマーサポート部門は顧客自身からお問い合わせがあり、そのお問い合わせ内容の解決を迅速に行うことを目的としています。
一方カスタマーサクセス部門は、顧客にアドビ製品の価値を感じてもらうために、機能の説明や事例紹介などをアドビから提案していくなど、それぞれの部署で明確に役割を分けています。
Slack Technologies Inc
Slackは、1日のアクティブユーザー数3,880万人以上、世界150ヵ国以上で利用されている、コミュニケーションツールです。
顧客満足度が高ければ、そこからさらに機能の追加、契約の更新に繋がるため、Slackでは顧客満足度を重視しています。
その指標として、Slackのカスタマーサクセスでは以下の3つの軸で顧客をスコアリングしています。
①Slackへどれだけログインしているか
②チャット以外でどれだけの機能を使っているか
③Slackのことをどのくらい気に入っているのか
そして、顧客からの要望やフィードバックは全社に共有され、反映できるものは反映させていくことで、高い顧客満足度を維持し、その結果、ユーザー数の増加や機能の追加、契約の更新に繋がり、売上アップを実現しています。
Sansan株式会社のカスタマーサクセス事例
Sansan株式会社は、「出会いからイノベーションを生み出す」をミッションに、法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」と、個人向け名刺アプリ「Eight」を展開する企業です。
Sansanのカスタマーサクセスは解約率を下げることを重視しています。
解約率を下げるためには、まずサービスの導入時期に活用を習慣化してもらうことが重要と捉え、オンボーディングフェーズを七つに区切ってスケジュールを引き、そのプロセスから遅れが出ていないかを確認するなど、様々な施策を行ないました。
その結果、クラウド名刺管理サービス「Sansan」の解約率は0.5%以下(2024年5月時点)と、世界的にも珍しいほど低い数字になりました。
また、1万社の実績と蓄積されたノウハウで、継続的な運用や活用促進をサポートするためのカスタマーサクセスプラン(※)というものを作成することで、ユーザーに寄り添い、抜け漏れなく徹底したサポートを行なっています。
株式会社ベルフェイス – 導入企業の99.5%が継続利用
「勘と根性の営業をテクノロジーで開放し企業に新たなビジネス機会をもたらす」をミッションに掲げ、国内No.1のオンライン営業システムを提供してる企業です。
過去「良いプロダクトを作って提供すれば売れるし、使われていく」という考えで事業を行っていましたが、解約率が高かったことからカスタマーサクセスに力を入れ、その結果、導入企業の99.5%が継続利用するまでとなりました。
ベルフェイスが行ったカスタマーサクセスの主な施策は
・オンボーディングに力を入れる
・定期的なヘルススコアの再構築
・利用ユーザーが集まるセミナー「ユーザー会」の開催
の3つです。
特にユーザー会の開催は、すぐに効果が出るわけではないものの、参加後にモチベーションが上がっている状態となり、連絡が繋がりやすくなったとのこと。
そして、連絡が取れている企業はツール接続数が伸びるという数字が出ており、継続利用率が高くなっている理由の1つとして挙げられます。
株式会社SmartHR
クラウド型の人事労務ソフト「SmartrHR」の開発・運用を手掛けている企業です。
労務手続きの書類の自動作成や役所への申請をオンライン上で行えるこのサービスは、2018年時点で導入企業数15,000社、2020年秋には30000社以上をこえ、ものすごいスピードで導入企業数を増やしています。
しかも、継続利用率が99%を超えており、カスタマーサクセスチームの優秀さが伺えます。
SmartHRの継続利用率が高い背景には、カスタマーサクセスが受け取ったユーザーの声を定期的に開発チームに届け、機能改善に反映していることが挙げられます。
他にも、ツール上のメッセージを検討する際には、専門のUXライターや労務知識が豊富なエキスパートなど、ユーザーに近い立場のメンバーからの意見を取り入れるようにしています。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
カスタマーサクセスと似た職種としてカスタマーサポートがあります。この2つの職種の違いを、以下の表で紹介します。
カスタマーサクセス | カスタマーサポート | |
目的 | 戦略的な顧客育成 | 問題解決 |
対応 | 予防的アプローチ | 受動的対応 |
期間 | 長期的な価値提供 | 短期的な解決 |
活動タイミング | 成約後の導入サポートから | 顧客が利用を開始してから |
例えば、株式会社SmartHRのカスタマーサクセスとカスタマーサポートの求人を見てみると、カスタマーサクセスの業務内容は、オンボーディング(使い始めから使いこなす手前までの期間をサポート)や、契約更新に向けたアプローチ、新機能の提案など積極的な業務が多く見られます。
一方でカスタマーサポートの業務内容は、顧客からのチャットでのお問い合わせ対応やヘルプページの更新など、攻めよりも守りの業務が多いようです。
年収も、営業要素の強いカスタマーサクセスは467万円から高いと1000万円を超えるのに対し、事務的要素の強いカスタマーサポートは、400万円〜600万円となっています。
なぜ今カスタマーサクセスが注目されているのか?
カスタマーサクセスを導入している企業が多いSaaS業界の成長や、サブスクリプションモデルの普及により顧客維持の重要性が高まっていることから、カスタマーサクセスが重要だと捉える企業が増えてきました。
転職サービスdodaに掲載されている求人によると、カスタマーサクセスを含む新しい営業職の求人数は3年間で12倍に増加(参照:PR times)。
株式会社リクルートによる調査でも、新しい営業職への転職者数は3年間で3.29倍となっており、企業・求職者ともにカスタマーサクセスへの注目度の高さが伺えます。(参照:リクルートHP)
カスタマーサクセスが注目されている背景には、企業のDX化推進やサブスクリプションモデルを導入する企業の増加などが挙げられるでしょう。
カスタマーサクセス成功のための3つのポイント

カスタマーサクセス部署を新設し、上手く軌道にのせるためには以下の3つのポイントが重要になってきます。
1.データ駆動型アプローチ
2.プロアクティブな介入
3.スケーラブルな運用体制
1つずつ見ていきましょう。
1.データ駆動型アプローチ
顧客の製品利用データやフィードバックを分析し、データに基づいた最適な提案を行うことで、顧客の成功を支援し、解約防止やLTV(顧客生涯価値)向上につなげます。
2.プロアクティブな介入
ヘルススコア(顧客の活用レベルを数値化したもの)などを活用し、早期対応を実施することで、継続利用と満足度向上を図ります。
3.スケーラブルな運用体制
デジタルコンテンツやチャットボットを活用し、多くの顧客に対して効率的にカスタマーサクセスを提供できる仕組みを構築することで、ユーザー数が増加してきても、フォロー不足になることを防ぎます。
今後のカスタマーサクセスのトレンド
Mordor Intelligenceのレポートによると、顧客維持や顧客満足度の向上、顧客基盤の拡大において、企業にとってカスタマーサクセスは必要不可欠であるとし、今後もカスタマーサクセスの市場規模は増えていくと予測されています。
参考:カスタマーサクセス管理ソフトウェア市場規模・シェア分析-成長動向と予測
そんなカスタマーサクセスの今後のトレンドとして、AI/機械学習の活用、プロダクトレッドグロース(PLG)、ハイブリッドアプローチが注目されています。
AIによる顧客データ分析やチャットボットによる自動対応を強化し、人的リソースを高度な支援に集中することで、抜け漏れなく対応できる環境を整えます。
そして、プロダクトレッドグロースでは、直感的なUIや無料トライアルを活用し、人を介さずとも顧客に製品の価値を感じてもらえるような環境を構築。
一方で、AIと人的サポートを組み合わせたハイブリッドアプローチにより、顧客の規模やニーズに応じた最適な支援を提供していけるようになるでしょう。
まとめ:カスタマーサクセスの役割と事例のポイント
Sansanはオンボーディングに力を入れることで、SaaS業界内でもかなり低い解約率0.33%を実現しています。また、SmartHRはカスタマーサクセスが顧客からサービスの改善ポイントを聞き出し改善したことで、サービス継続率が99%以上になっています。
このように、カスタマーサクセスを上手く活用することで
・解約率の減少
・LTVの向上
・サービスの改善
など、売上増加に繋がるメリットがたくさんあります。
カスタマーサクセスの導入を検討されている企業は、ぜひ参考にしてください。
また、私たちキャリア・エックスではカスタマーサクセスへの転職サポートを数多く行っています。
カスタマーサクセスの経験者を採用したい企業様、経験者・未経験者問わずカスタマーサクセスへの転職をしたい方は、お気軽にご相談くださいませ。
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