未経験でも大丈夫?SaaS系企業の営業職に求められるスキル

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営業する女性

IT系やSIer系の営業から、SaaS(Software as a Service)系の営業に転職を検討している場合、気になるのはSaaS系未経験でも大丈夫だろうか、という点ではないでしょうか。ソフトウェアという意味ではIT系やSIer系の営業と共通する点もあり、違いを理解した上で強みを生かしていけば、未経験でもSaaS系企業の営業職に転職することも夢ではありません。

SaaSの基本について確認した後、営業職に求められることの違いを見ていきましょう。

SaaSの概念と代表的なサービス

SaaS(サース)とは「Software as a Service」のことで、ソフトウェアの機能をインターネット経由で提供する形態のことを指します。

SaaSの代表的なサービスとしては、Microsoft 365(旧Office365)やAdobeのソフトウェア郡、Salesforce、Zoom、Slackなどが挙げられます。グループウェアのサイボウズや人事労務のSmartHR、名刺管理のSansanなどは、国内企業が展開するSaaSです。

Microsoft社のOfficeやAdobeのソフトウェア群は、以前はパッケージソフトとして展開されていて、手元のPCにインストールして使うライセンス形態だったのを覚えている方も多いでしょう。両社は近年、SaaS型への切り替えに成功した企業として注目されています。

SaaSの課金モデルは「サブスクリプション」

音楽配信のApple MusicやSpotify、動画配信のNetflixも採用している「サブスクリプション」は、定額を支払うと一定期間サービスを利用できるタイプのサービス。多くのSaaS企業が採用している課金モデルも、このサブスクリプションです。

なお定額と言っても、提供する機能やアプリに差を付けて複数の料金プランを設けることが一般的です。例えば、Netflixでは動画の品質や利用できる端末数で、プランを差別化しています。

それでは、B2Bのソフトウェアにおいて、SaaS型のメリット・デメリットを見ていきましょう。


顧客側のメリット・デメリット

顧客側のメリット・デメリット

メリット

・すぐ利用開始できる

・すぐ最新の機能を利用できる

・初期コストを抑えられる

・どこからでも利用できる

・システム管理負荷の軽減

デメリット

・カスタマイズの余地が少ない

・セキュリティやデータ管理上制約が出る

・バージョンは固定できない

・メンテナンスや障害で利用できないこともある

・売り切りではなく毎月(毎年)出費が発生する


サービス提供者側のメリット・デメリット

メリット

・毎月の売上が安定する

・最新の機能を提供できる

・継続的な利用を期待できる

デメリット

・サービス開始までは先行投資が必要

・継続的なサービス・コンテンツ開発が必要

・大幅なカスタマイズ要望には対応できない

・継続的なサポート体制・工数がかかる

数年ごとにパッケージソフトをリリースするパッケージビジネスモデルや、一から開発したりカスタマイズして導入するSIerビジネスと異なり、SaaS型ビジネスの場合、積み上げ型で毎月の売上が安定するメリットがあります。

一方で、未経験の営業職には特に意識が必要な違いとして、パッケージソフトの売り切りと異なり、SaaSでは顧客の満足度が低ければ解約されてしまうリスクがあり、新規顧客の獲得コストを回収しきれないケースもあります。

そのため、SaaSおよびサブスクリプション型のビジネスを採用している企業では、「解約率(チャーンレート)」を下げ「LTV(Life Time Value, 顧客生涯価値)」を最大化することが経営指標となっています。

一般にサブスクリプションでは、毎月の料金が売り切りよりも安く設定されているので、例えば顧客が1ヶ月で解約してしまった場合、顧客獲得費用はもちろん、開発費も回収できないことが考えられます。

こうした事態を避けるには、顧客の満足度を上げ、継続してサービスを利用してもらうことが大事です。SaaSおよびサブスプリプション型のビジネスを採用している企業で「カスタマーサクセス」の部門があるのは、サービスの利用を通じて顧客のビジネスの成功を支援し、満足度を上げることで解約率を下げる施策になります。

したがって、SaaS未経験で転職した営業の方は、契約を取ることがゴールではなく、利用開始はスタートであり、いかに継続利用してもらうかが大事、ということを意識する必要があります。

ASPとSaaSの違い

そういえばネットでサービスを提供するモデルをASP(Application Service Provider)と言わなかったっけ?と思われた方もいるかもしれません。ASPはサービス提供者、SaaSは提供されるサービスあるいはそのビジネスモデルそのものを指す、という視点の違いがあります。

SaaS型ビジネスの営業モデルと求められるスキル

SaaS型ビジネスの営業モデルと求められるスキル

顧客の要望に合わせてソフトウェアを提案・設計・開発するSIerと異なり、SaaS型ビジネスでは、基本的に売る商材は同じでカスタマイズする余地はあまりありません。こうした環境では営業プロセスの標準化が可能であり、各段階での数値化・可視化が行われていることがSaaS型営業の特徴です。

ベストセラー書籍「THE MODEL」で知られるように、営業のプロセスをマーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの4つに分け、分業・共業することで営業の効率化・最大化を目指すスタイルが一般的です。分業し担当部分に専念することで、より集中し専門的なアプローチが可能になると期待されています。

「THE MODEL」の著者福田康隆さんはオラクル、Salesforceを経てマーケティングオートメーションツール「マルケト」の社長という経歴の持ち主で、日本のSalesforceを成長させた営業手法がまとめられています。2,000円程で購入できるので、未経験からSaaS営業への転職を考えている方は、基礎知識として読んでみるのもよいでしょう。

それでは、マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスそれぞれの役割について以下で解説していきます。

「マーケティング」の役割

マーケティングにも色々ありますが、「THE MODEL」におけるマーケティングの役割は、見込み客(リード)を獲得することです。

メルマガや広告、オウンドメディアを通じた問い合わせ、セミナーなどを通じて顧客と接触し、サービスを認知してもらい、見込み客を獲得します。

大きな企業では営業部門とマーケティング部門が分かれていますが、人員が限られているベンチャーでは、両方を兼ねることもあります。

「インサイドセールス」の役割

インサイドセールスは、内勤型営業とも訳されますが、直接顧客を訪問するフィールドセールスに対する言葉です。「THE MODEL」におけるインサイドセールスは、見込み客の購買意欲を高め、確度が高い状態になったら、営業へ引き渡す役割です。

B2Cでは店頭で服を見てその場で買うことも一般的ですが、B2Bではサービスの認知から契約までに時間がかかり、担当者と決定権者が別なこともあるので、複雑・長期化するのが一般的です。いきなり対面で営業しても、非効率的なので、電話やメルマガなど非対面の手段で顧客の購買意欲を高める「リードナーチャリング(見込み客育成)」を行います。

例えばSalesforceにはMA(マーケティングオートメーション)機能もあって、適切なタイミングや手法で顧客にアプローチし、その反応をポイント化して購買意欲を評価します。

メルマガを開封しない人より、開封した人の方が購買意欲が高いはずで、電話に対応してくれたり、セミナーに参加してくれたり、そうした積み重ねで複数の反応をポイント化していくことで、購買意欲を測ることができるのです。

「営業」の役割

「マーケティング」が見込み客を獲得し、「インサイドセールス」が見込み客を育成したら、いよいよ「営業」の出番です。「THE MODEL」における営業は、具体的な商談から契約までを担います。

「カスタマーサクセス」の役割

「カスタマーサクセス」の役割

SaaSおよびサブスクリプション型のビジネスでは、「カスタマーサクセス」部門があるのも一般的です。カスタマーサクセスの役割は、契約継続を維持するとともに、アップセル・クロスセルなどで売上を拡大することです。

サブスクリプション型のビジネスでは、初期費用を抑えて気軽に導入できる代わりに、気軽に解約できるというデメリットもあります。そこで、「解約率(チャーンレート)」「LTV(顧客生涯価値)」「オンボーディング完了率」「アップセル率」「クロスセル率」などの指標を用いて継続率やLTVを最大化させます。

SaaSおよびサブスクリプション型のビジネスでは、ある程度の操作に慣れ一通りの操作を体験しないと、満足度を感じる以前の問題で解約されやすいことが知られています。そこで、ゲームと同じように操作説明が出る「チュートリアル」や、紙芝居的に主要機能を見せる「ウォークスルー」、活用度を促進する「チェックリスト」などの手法でサービスに慣れてもらうことが大切です。

社内で新しいサービスを導入する時にベンダーの担当者が来てセミナー的に操作説明することがありますが、これも「オンボーディング」の一種です。

「カスタマーサポート」と「カスタマーサクセス」の違い

カスタマーサポートは基本的に顧客からの問い合わせや不満・障害などに対応する受身的なポジションなのに対し、カスタマーサクセスでは顧客に働きかけ、顧客の成功を支援する能動的なポジションです。

SaaS営業職に求められるスキル

それぞれの役割については一通り説明しましたので、SaaS型ビジネスの営業職に求められるスキルを確認しましょう。

まず、SaaSとはソフトウェアの機能をインターネット経由で提供する形態のことです。提供形態が変わるだけですので、IT系やSIer系の営業を経験してきた方なら、商品知識の面では、問題がないでしょう。

次に、SaaSおよびサブスクリプション型のビジネスの営業モデルでは営業プロセスをマーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの4つに分け、分業・共業することで営業の効率化・最大化を目指すスタイルが一般的です。

こうした分業体制やプロセスごとの指標管理は、営業効率はアップするものの細かく管理されるのは苦手、という方もいるかもしれません。また、転職先企業の規模もポイントで、ベンチャーなど人員が限られている企業では、マーケティングから営業まで兼ねたり、あるいは手法や組織の確立まで行うなど、実力を試せる場となりそうです。

また、営業プロセスのどの役割に適しているか考えてみるのもよいでしょう。顧客との関係を作り、ニーズを引き出したりしていくのが得意ならインサイドセールス、クロージングに喜びを感じるならTHE MODELでいう所の「営業」、顧客の成功に貢献したいなら「カスタマーサクセス」です。

IT系営業やSIer営業出身の方が注意すべきこと

IT系営業やSIer営業出身の方が注意すべきこと

パッケージソフトウェアやシステム開発などは売り切りに近いビジネスモデルですが、SaaSおよびサブスクリプション型のビジネスでは、初期費用を抑えて気軽に導入できる代わりに、長期間の契約で売上を最大化することが求められるビジネスモデルです。

目先の数字のために無理やり契約を取る必要はない代わりに、利用開始がスタートであり、顧客満足度を向上し契約継続を勝ち取る関係づくりが営業職にも求められます。そのなかには、顧客の要望を開発サイドに伝えて反映し、サービスの価値を高めることも含まれます。

SIerの営業職では、いかに大きな案件にするかも腕の見せどころですが、SaaSおよびサブスクリプション型のビジネスでは、いきなり単価が上がるということはほとんどありません。また、大きくカスタマイズする機会も少ないため、インサイドセールスから引き渡された見込み客をいかに効率的に成約に結びつけるかが求められます。見込み客の課題を解決するパターンを見つけ出して提案する部分では、SIerのソリューション営業と近い部分があります。

基本を押さえてSaaSの営業職になろう

基本を押さえてSaaSの営業職になろう

SaaSのビジネスモデルや営業プロセスはよく整理され標準化されているものの、用語が多く、企業が違っても基礎知識となるので、転職を検討する際には一通り理解しておきましょう。

SaaSプロダクトの提供価値やプロダクトのフェーズ、マーケのリードの獲得の仕方によっては、クライアントの課題が顕在化してないケースも多いです。

大事なポイントは、見込み客の課題をいかに顕在化させるか。この点については、IT系やSIer系の営業経験が非常に活かされやすいです。

その一方で、SaaSプロダクトでは機能をカスタマイズする余地は少なく、見込み客に対する課題解決パターンを見つけ出し、いかに提案にあてはめていくか。

マーケティングからセールスまで一気通貫で、売れる仕組み(価値を届ける仕組み)を構築できるかが、特に重要となります。

上記のようにSaaSの基礎的な知識を学びつつ、これまでの営業経験を活かすことでIT系やSaaS系以外にも金融や広告系などから未経験でもSaaS系企業の営業職への転職を成功に導くことが可能です。

SaaS業界は成長著しい企業が多いので、ぜひキャリアアップの選択肢に検討してみてはいかがでしょうか。弊社では未経験からのSaaS業界への転職を多数支援しています。ご興味ある方は以下よりお気軽にご相談ください。


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