SaaS企業の営業はインサイドセールスとフィールドセールスに大別できます。どちらも重要な役割を持つセールスであり、働く側はそれぞれの仕事内容と違いを正しく理解しておくべきです。
今回はSaaS企業の営業に詳しくない方へ向けて、インサイドセールスとフィールドセールスの基本知識と志望するにあたって知っておくべき特徴と違いを解説します。
目次
そもそもSaaSとはなにか
最初にSaaSとはなにかを簡単にご説明します。
概要と代表例
SaaSとは、「Software as a Service」の略称で、直訳すると「サービスとしてのソフトウェア」という意味になります。
インターネットを経由して利用するソフトウェアを指します。基本的にパソコンやスマートフォンにアプリをインストールするのではなく、ブラウザを利用してソフトウェアを利用します。
インターネット経由で利用するソフトウェアであるため、オフラインでの利用はできません。
必ずインターネットに接続できる環境での利用が必須です。言い換えるとインターネットに接続できれば、どこからでも同じようにソフトウェアを利用できます。
なお、SaaSの代表例には以下が挙げられます。
- Chatwork
- Zoom
- Google カレンダー
- Gmail
- マネーフォワード クラウド
数多くのソフトウェアがSaaSとして世の中にリリースされているのです。
SaaSについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
SaaSのビジネスモデル
SaaSは「サブスクリプションモデル」と呼ばれる継続課金型のビジネスモデルです。売り切りではなく、継続的に利用してもらうことで収益を上げる仕組みです。小さな売上を積み立てる仕組みであるため、継続的に長期間利用してもらう必要があります。
このようなビジネスモデルであるため、セールスは先を見据えた営業活動が必要です。長期的に利用したくなるソフトウェアであることを伝えなければなりません。契約を勝ち取っても半年など短期間で解約されては意味が薄れるため、訴求の仕方を考慮する必要があります。
サブスクについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
インサイドセールスとは?
続いてはインサイドセールスについてご説明します。
インサイドセールスは内勤営業
生産性・効率性を重視
インサイドセールスは生産性や効率性が重視されます。「営業には時間をかけても大きな案件を受注する」との考え方もありますが、インサイドセールスは違います。
インサイドセールスの役割は、クライアント候補を見つけることです。見込みのないクライアントとのやり取りは最小限に抑えるなど、生産性・効率性を重視した営業が求められます。
また、生産性を高めるために、インサイドセールスはメール・電話での応対が基本です。会議形式の営業はインサイドセールスの役割ではありません。
クライアントの潜在的な需要を引き出す
インサイドセールスには、クライアントの潜在的な需要を引き出す役割があります。困りごとなどをヒアリングして、その課題をSaaSで解決できる可能性を探ります。
世の中にはまだSaaSを知らない人や企業も多くあります。そのため、インサイドセールスに説明されて初めて興味を示す人は多いのです。課題の解決方法を示すことで「便利なサービスがあるのか」と取り合ってくれます。
最初からSaaSについて詳しく調べ、問い合わせをしてくるクライアントは限られています。それ以外のクライアントには、インサイドセールスから働きかけて、潜在的な需要を引き出す必要があります。
クロージングできるクライアントを判別
インサイドセールスの重要な役割は、フィールドセールス(詳しくは後述)がクロージングできるクライアントを見つけることです。つまり、クロージングにつながるクライアントを見つけなければなりません。
メールや電話などで、インサイドセールスはクライアントがクロージング候補にあるかどうかを見極めます。SaaSに興味を示しクロージングできる可能性がある場合のみフィールドセールスと連携し、会社全体の営業効率を高める役割を担います
インサイドセールスが注目される背景
インサイドセールスはメールや電話での内勤営業が中心です。そのため、新しい働き方に適しているとして注目されています。
これまではクライアントを訪問しての営業が中心でした。ただし、近年はSaaSの普及により営業活動が分業化され、対面以外での営業も増えているため、インサイドセールスによる営業が注目されています。
SaaS企業のインサイドセールス
SaaS企業のインサイドセールスは、自社の製品を必要としそうな企業への営業や一括問い合わせなどへの対応が中心です。リード獲得を目的として企業の問い合わせフォームから営業してみたり、見込み顧客からの資料請求に対して対応をしたりします。(リード獲得については、マーケティング部門が担っているケースもあり、分業の粒度は会社によって異なります。)
ただ、この段階では「少し興味を持ってくれた企業」でしかありません。ここからさらに興味を持ってもらい、クロージングにつなげられるように働きかけをしていきます。
フィールドセールスとは?
インサイドセールスと比較されることが多いフィールドセールスについてもご説明します。
フィールドセールスは
クロージングに対応するセールス
フィールドセールスはクロージングに対応するセールスです。インサイドセールスがクロージングできそうなクライアントを見極めているため、その情報をもとに実際のクロージングをしていきます。
ただし、クロージングするためにはクライアントが求める要望などをインサイドセールスから共有された情報をもとに、あらかじめ把握し、見極める必要があります。無計画に商談に出向くのではなく、クライアントに刺さる提案をすることが求められます。
なお、初回でクロージングすることもあれば、複数回のやり取りを経てクロージングすることもあります。クロージングにつながりそうな兆しが見えれば、粘り強く対応する必要があります。
臨機応変な対応が必要
クロージングするためにはクライアントに刺さる提案が必須です。そのため、状況に応じて臨機応変に提案内容を変更しなければなりません。
基本的にはクロージングに向けて、提案内容を社内で検討し、クライアント先へと向かいます。ただ、クライアントの要望が想定とは異なるケースも多々あるでしょう。そのような場合に、その場で資料に含まれない内容などを補足するなど臨機応変な対応が求められます。
先回りの提案力が求められる
クライアントが現在持つ要望だけではなく、この先発生すると考えられる要望にも応えるのが理想的です。目の前の課題を解決できればクライアントは満足しますが、その一歩先を行く提案力が求められます。
例えば、同業他社の事例を踏まえて、クライアントが持っていそうな課題と解決策を検討しておきます。必要に応じてこれらを提示することで、クライアントがよりSaaSに興味を持ちクロージングに繋がりやすいです。
また、先回りの提案ができれば「自社のことをよく理解している」との印象を持ってもらいやすくなります。これは信頼関係の構築につながり、案件獲得にもつながりやすくなります。
フィールドセールスが注目される背景
従来の営業活動において、セールスの負荷が高まったことで、フィールドセールスが生まれています。今まではインサイドセールスとフィールドセールスを同じ担当者がこなしていましたが、効率性を重視し、役割分担するようになりました。
インサイドセールスとフィールドセールスは同じ「セールス」ではありますが、求められる仕事内容が大きく異なります。これが負荷を高める原因となっていたため、内勤と外勤に分類してそれぞれに専門性を持たせるに至りました。
現在、国内でもSaaS企業が増加し、求人ニーズも高まっているため、インサイドセールス同様に注目されています。
SaaS企業のフィールドセールス
基本的には製品の細かな説明と必要な費用などをクライアントごとに訴求する役割です。SaaSにも多くの機能が含まれているケースがあり、その中でも「どの機能をどう利用すると効果的なのか」にフォーカスして営業を行い、クロージングを目指します。
せっかくクライアントが興味を持っていてもフィールドセールスの訴求が悪ければ、SaaSの導入を見送られる可能性もあります。そのような状況を避けるべく、クライアントへピンポイントに訴求していきます。
インサイドセールスとフィールドセールスの違い
上記まででインサイドセールスとフィールドセールスの概要についてご説明しました。それぞれSaaS企業においてどのような役割を持つのかイメージしていただけましたでしょうか。
続いては、SaaS企業においてインサイドセールスとフィールドセールスの違いについて、以下の観点からまとめていきます。
- 勤務場所
- 仕事の目的
- 業務内容
それぞれについてご説明し、SaaSのセールスには何が求められているのかを解説します。
勤務場所
インサイドセールス・フィールドセールスでは、主な勤務場所が異なります。インサイドセールスは事務所での内勤勤務が基本ですが、フィールドセールスはクライアント先への訪問が中心です。
勤務場所の違いはSaaS企業での働き方の違いにつながります。人によって外回りが好きかどうかは異なると考えられるため、自分に適した方法を選択すべきです。事務所で実施する営業活動とクライアント先へ出向く営業活動は大きく異なるため、重要な違いとして押さえておきましょう。
ただし、最近ではコロナウイルス感染拡大に伴い、リモートワークが普及しており、オンラインでの商談も増えています。
仕事の目的
セールスに求められる目的が異なります。インサイドセールスは見込み顧客の選定ですが、フィールドセールスはクロージングです。業績に直結するかどうかの違いがあるため、ここは理解しておきましょう。
もちろん、SaaS企業のインサイドセールスとフィールドセールスは協力して仕事を進めます。そのため、お互いに役割分担が必要で仕事の目的が違うのは当たり前のことです。同じ目的であれば役割分担する意味がなくなってしまいます。
大きな違いとして理解してもらいたいのは、フィールドセールスにはクロージングの責任があることです。クロージングできるかどうかについて責任を負うため、精神面も含めて自分に適した仕事か評価しましょう。
業務内容
日々の業務内容にもそれぞれ大きな違いがあります。
インサイドセールスは、電話やメールを中心とした顧客対応になる一方で、フィールドセールスはクライアントのもとへ直接訪問して営業活動を行います。
クライアントと対面で商談を行うか否かが、両者が大きく異なる点となります。
インサイドセールスとフィールドセールスのどちらがよいか
最後にSaaS企業のインサイドセールスとフィールドセールスのどちらに適しているかについて、判断ポイントをご紹介します。
提案力に自信があるか
SaaSのフィールドセールスには、クライアントに対する柔軟な提案力が求められます。クライアントの事務所やリモートで対面での提案となることが多く、プレゼンテーション力や、訴求する力などが必要です。
例えば、SaaSは販売してから継続的にフォローが必要です。そのため、目の前の課題に対応するセールスだけではなく、これから発生する可能性のある課題まで見据えた提案をしなければなりません。クライアントが気づいていないような課題への対応も先回りして提案できると理想的です。
フィールドセールスのアピール内容や提案が良ければ、クライアントは興味を持っていただき、発注していただけます。コミュニケーションスキルや提案力に自信がある方は、フィールドセールスが向いているでしょう。
スピードと繰り返しの業務が適しているか
インサイドセールスは同じ業務をスピーディーに繰り返し行わなければなりません。問い合わせなどに対して、決まった内容の営業活動を行うのが一般的です。会社の代表として一番最初に多くの顧客接点を担う役割ですが、ある程度同じような業務の繰り返しになる可能性もあり、これが自分に適しているか考えましょう。
愚直にスピーディーに業務をこなせるのであれば、インサイドセールスが適しているはずです。逆に繰り返しの業務に苦痛を感じるならば、フィールドセールスを選択すべきでしょう。インサイドセールスには繰り返しの業務を丁寧にこなす力が求められるため、適性がない方も一定数いるはずです。
もちろん、フィールドセールスにも繰り返しの業務や丁寧な仕事が求められますが、繰り返しの度合いが異なるため、悩んだ際は検討事項として考慮してみましょう。
まとめ
本記事では、SaaS企業のインサイドセールスとフィールドセールスについてご説明しました。SaaS企業では、営業の役割が見直し、現在はインサイドセールスとフィールドセールスで役割分担する形が主流となりました。
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