SaaS企業とSIerでは働き方に違いが!?営業に求められる差を解説

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SaaS企業とSIerにはどちらも営業が在籍し、会社の商材をアピールして新規の案件を獲得しています。ただ、それぞれの営業が担う役割や求められるスキルには違いがあります。今回はそれぞれのビジネスモデルを踏まえて、営業にはどのような違いがあるのかご説明します。

SaaS企業とSIerのビジネスモデル

SaaS企業とSIerのビジネスモデル

SaaS企業とSIerにはビジネスモデルに大きな違いがあります。このビジネスモデルの違いが求める人材に大きな違いをもたらしています。最初にSaaS企業とSIerのビジネスモデルはどのように異なるのかをご説明します。

SaaS企業のビジネスモデル

SaaS企業はサブスクリプションモデルのビジネスです。初期投資は大きくなりますが、リリースして多くの顧客に継続して利用してもらうことで利益を出します。顧客が増えれば開発コストの増加以上に売上が高まるため、高い利益率でビジネスを続けられます。

一般的にSaaS企業はストック型のビジネスとなるため、最初は初期費用の回収が重要となります。顧客あたりの売上や利益は大きくはありませんが、顧客数を増やし積み上げることで、ビジネスとして成立させるモデルです。

SaaSのビジネスモデルについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。

SIerのビジネスモデル

SIerはスキルのある人材の労働力を提供するビジネスです。人月ビジネスとも呼ばれるもので、人を提供すれば提供するほど利益が上がります。基本的には赤字にならない代わりに、一人あたりの利益率は低く設定されています。

ただ、SIerはSaaS企業よりも大規模な案件を受けやすいという魅力があります。そのため、利益率だけで見ると低くとも、売上額や利益額は大きくなりやすい点が特徴です。利益を上げるためにも、営業は大きな案件を獲得できるように行動しなければなりません。

SaaS企業に求められる営業

SaaS企業に求められる営業

それではSaaS企業に求められるのはどのような人材なのでしょうか。営業の担当業務と、それに伴って必要となるスキルの2つの観点から解説します。

営業の担当業務

顧客へサービスを紹介・提案

SaaS企業として自社のプロダクトを、ご紹介、ご提案しなければなりません。クライアントに興味を持ってもらい、最終的なクロージングにつなげるのが営業の役割です。

ただ、SaaS企業の営業にはインサイドセールスとフィールドセールスの2種類があります。新規顧客の開拓とクロージングは別の営業が担当するケースが増えているため、営業といえども特定の業務に特化する時代となっています。

インサイドセールスとフィールドセールスの詳しい説明は、こちらの記事をご覧ください。

顧客の要望をヒアリング

自社プロダクトが顧客に適しているか判断するためには、顧客からのフィードバックを得るためにヒアリングが重要です。顧客はプロダクトの一部分だけを見て提案を希望している可能性があるため、営業目線で提案できるか判断すべきです。

時には顧客が求めているものと自社プロダクトに大きな乖離があるかもしれません。そのような状況で無理やり提案を進めるのは、言うまでもなく無謀な選択ですし、顧客に対して不誠実な行いです。顧客と自社プロダクトの間に大きな乖離があるならば、営業として提案を見送る判断も必要です。

システムの利用サポート

SaaSプロダクトはサブスクリプションモデル型ですので、導入して終わりではなく、継続的に利用してもらうことで利益を生み出します。継続的な利用を促すためにも、営業(カスタマーサクセス)は利用後のサポートやフォローをしなければなりません。

なお、サポートが必要とはなるものの、実際にテクニカルなサポートをするのはエンジニア部門です。すべての問い合わせに営業が回答するわけではありません。営業だけで回答できるものには対応すべきですが、全てに答えることよりも、顧客の問い合わせ窓口となり続けることが重要です。

カスタマーサクセスの詳しい説明は、こちらの記事をご覧ください。

積極的なサービス

客にサービスを提案し、興味を持って貰えたら、積極的な売り込み(インサイドサービス)が必要です。問い合わせがある潜在顧客層にはできるだけ早くアプローチして商談のアポイントメントを獲得しなければいけません。インサイドセールスやフィールドセールスに任せっきりになるのではなく、サポートさながら顧客の信用を勝ち取るのも営業の仕事です。

クレーム対応

顧客に自社のサービスを長く使ってもらうためには、常に新しいサービスを提案したり、顧客の意見を取り入れたサービスを展開する必要があります。満足度を高めるためには、小さなクレームにも真摯に対応し「どうして起こったのか」

「どのように解決するのか」「今後は、どのようにすべきなのか」を顧客に対して提案し、改善すべきことは報告しなくてはいけません。クレーム対応こそが、顧客の信頼を勝ち取り継続して使用してもらうための鍵となります。

営業に必要なスキル

自社プロダクトに関する理解

当たり前ですがSaaS企業の営業は自社プロダクトの紹介・提案ができなければ話になりません。そのため、自社プロダクトの知識は十分に習得しておく必要があります。Webサイトに公開されているような表面的な情報だけでなく、顧客が気になる細かな部分まで把握しておきましょう。

例えば、顧客がSaaSプロダクトの強みについて確認してきた際に、SaaS企業としてどのような強みを打ち出しているのか自分の言葉で伝える必要があります。また、競合他社と比較してどのようなプロフィットがあるのかも頭に入れておくとよいでしょう。

また、導入を検討するにあたっては、今後の展望について訊ねられる可能性があります。新機能の開発などは企業秘密であり答えられない可能性もありますが、できるかぎり回答できるように準備しておきましょう。

ヒアリングスキル

SaaSプロダクトを導入してしまうと後戻りできない可能性があるため、失敗しないような丁寧なヒアリングが求められます。営業はいつでもヒアリングスキルが必要ですが、SaaS企業の営業は特に重要だと考えておきましょう。

丁寧なヒアリングができずSaaSプロダクトを導入してしまうと、顧客からクレームの嵐となりかねません。特にSaaSプロダクトは顧客ごとのカスタマイズに限界があるため、後から要望が出ても対応できない可能性があります。顧客のニーズとSaaSプロダクトが提供できることのしっかりしたすり合わせが重要です。トラブルを防ぐためにヒアリングスキルは必須と言えます。

良好な関係を構築し続けるスキル

継続的な利用で収益を得るビジネスモデルであるため、顧客との関係性づくりが重要です。良好な関係を築けるスキルがなければ、SaaS企業の営業は務まらないと言っても過言ではありません。

SaaSプロダクトは機能などはもちろん、営業のスキルなども顧客に評価されています。似た機能を持つプロダクトが他に存在している場合は、営業の評価がプロダクトの評価につながりかねません。顧客と良好な関係を築き上げ、長く使ってもらえるように工夫する必要があります。

SIerに求められる営業

SIerに求められる営業

続いてSIerに求められるのはどのような人材なのでしょうか。営業の担当業務と、それに伴って必要となるスキルの2つの観点から解説します。

営業の担当業務

顧客状況のヒアリングと提案

基本的には新しくシステムを開発するため、顧客の状況や要望を丁寧にヒアリングします。どのようなシステムが必要になるのか明確でなければ、見積もりなど後続の作業ができません。また、そもそも営業として提案できるかどうかの判断もできなくなります。

基本的に顧客は何かしらの課題を持っているために営業へ相談しています。ただ、その課題や解決策は曖昧なものであることが多く、営業は細かく具体的にヒアリングしなければなりません。そして、最終的にはヒアリング結果を踏まえて提案へと繋げます。

新規顧客の開拓

SIerは開発が中心となるため新規顧客の開拓が重要です。開発案件は同じ顧客から短期間で発注されるものではないため、案件が途切れないように多くの顧客を待つことが重要です。営業は顧客と関係を築き、開発のたびに相談してもらえる立ち位置となるべきです。

新規顧客の開拓は「顧客の問題ヒアリング」から始まり、「自社の強みを活かした提案と受注」で終わります。場合によっては提案や受注ができない可能性はありますが、営業は他の案件も見据えて顧客との関係づくりに注力すべきです。

ソリューションの展開

会社として何かしらのソリューションを保有しているならば、営業が主体となり展開しなければなりません。SIerの営業はスクラッチ開発を担当するケースが多いですが、すでに開発されたソリューションが存在する場合は、それを専門的に販売する担当者になるかもしれません。

ソリューションは基本的にシステムの内容が定まっているため、そのシステムが適した顧客の開拓をします。顧客の問題を解決するために自社のソリューションが適していると感じる場合にのみ提案するのです。ソリューションのターゲットとなる企業へ次々と提案をし、顧客数を増やす活動に取り組みます。

営業に必要なスキル

自社の開発力に関する理解

営業は自社の開発力を正しく認識しなければなりません。具体的には「現時点で何人のエンジニアがアサインできるか」「どの程度のレベルのエンジニアがアサインされるか」「顧客が求める技術は社内で対応できるか」などが必要になると考えておきましょう。

見積もりを作成する際はエンジニア部門と連携しますが、営業として見積もりを作るかどうかの判断が必要です。闇雲に見積もりの作成をすると無駄な工数を要してしまうため、社内の開発力を理解し見積もりを作成すべきかどうかの判断ができるようになるべきです。

業界・業務に関するスキル

業界や業務によって必要となるシステムや傾向が大きく異なります。SIerの営業は適切なシステムの提案をするためにも、業界や業種特有のスキルを身につけておきましょう。

例えば会計系のシステムでは法律を守るために様々な要件が挙げられるでしょう。法律に関する最低限の知識や、会計知識・法務業務に対するある一定の理解がなければ、営業として顧客と会話が成り立ちません。顧客と同等に話すのは難易度が高いですが、顧客の業務フローや専門用語が理解できるレベルは最低限求められます。

SIerは、顧客の業界や業務特有のシステムを開発するケースが多々あります。営業はそれらを理解して顧客の要望に対応できるようになるべきなのです。

SaaS企業とSIerの営業の違い

SaaS企業とSIerの営業の違い

SaaS企業とSIerの営業についてそれぞれご説明しました。それらのご説明を踏まえて、最後にこれらの営業にはどのような違いがあるのかをまとめていきます。

顧客のボリュームと質(顧客ごとの個別対応の有無)

顧客ごとの対応が必要となるかに違いがあります。SaaS企業は、ある一定完成しているサービスを提供するため顧客ごとの対応は限られますが、圧倒的に顧客数、顧客のボリュームが多くなります。マーケットニーズをセグメントとして捉え、より多くの顧客に価値を届けることが求められます。

一方、SIerは、その1社の顧客に適したものを提供するため顧客ごとの対応が必須です。商材に違いがあるため、個別・個別対応の有無には、非常に大きな違いがあります。

商材はソフトウェアか高度なITスキルか

SaaS企業とSIerでは商材が大きく違います。SaaS企業の商材は自社で開発し完成したソフトウェアが中心ですが、SIerではパッケージやシステム開発に対応する高度なITスキルが中心です。主にソフトウェアを扱うかITスキルを提供するかの観点で違いがあるため認識しておくべきです。

SaaS企業の営業はソフトウェアを扱うため、ソフトウェアに関する知識が深く求められます。スキルでもご説明したとおり自社プロダクトについて理解していることが必須で、機能面だけではなくテクニカルな部分についても可能な限り理解しておくべきです。完成しているソフトウェアを販売するため商材について理解していないと営業が不可能です。

それに対してSIerの営業はパッケージや高度なITスキルを扱うため、開発に関する知識が求められます。開発に必要な人材のスキル、開発規模のイメージ、責任境界点などを思い描けるようにする必要があるのです。高度なITスキルを一式で提供するために、営業はソフトウェア開発について幅広く理解しておく必要があります。

ビジネス的な観点が求められるか

SaaS企業の営業はサブスクリプションのビジネスモデルということもあり、システム開発以外の観点が求められます。単にシステムを導入して終わりではなく、導入することでビジネスにどのような利益をもたらすのかまでをはっきりと明示することが求められます。いわゆる費用対効果が求められると考えて良いでしょう。

それに対してSIerの営業はシステム開発の観点が中心となります。システム投資による費用対効果の算出は、通常顧客側のタスクとなり、営業は顧客が求めるものを提供することに注力するのが一般的です。原価の低減などは求められますが、そこから費用対効果の算出などには繋がりません。

提案の方向性

それぞれ提案の方向性に違いがあるため注意しておきましょう。SaaS企業は提供するサービスの範囲内に限られますが、SIerは顧客の要望を最大限反映させたものになります。

SaaS企業は現時点で提供しているサービスの範囲内で提案するしかないため、それ以上の提案はできず営業は基本的に決まった方向性の提案をします。(もちろん、顧客の要望を吸い上げて、自社プロダクトの商品企画、新たな機能開発につなげる役割もあります)一方、SIerではSaaS企業とは違い営業と開発部門で顧客のニーズごとに検討を重ね提案の方向性を定めます。その都度、顧客に沿った方向性を定める必要がある点はSaaS企業の営業と大きく異なります。(1つ目に記載した、「顧客のボリュームと質」と同様です)

まとめ

SaaS企業とSIerの違いについてご説明しました。これらはそもそもビジネスモデルに大きな違いがあるため、営業に求められるスキルも異なります。営業について理解するならば、まずはSaaS企業とSIerのビジネスの違いについて理解しておきましょう。

いかがでしたでしょうか。

この記事が、皆さんの転職にお役立てれば幸いです。

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