近年、ビジネスシーンでよく耳にするようになった「SaaS」。
本記事ではSaaSについての解説から始まり、代表的なSaaSの一例、「PaaS」や「IaaS」との違い、そして、SaaS導入のメリット・デメリットを解説します。
ぜひ、最後まで読み進めて頂ければ幸いです。
目次
SaaSとは?
端的に言うと、インターネットを通じて利用できるソフトウェアのことです。
「Software as a Service」の略称で、直訳すると「サービスとしてのソフトウェア」という意味になります。
従来、ソフトウェアが入っているCD-ROMを”1つの製品”として購入し、PCにインストールして利用することが主流でした。
しかし、SaaSは製品を購入するのではなく、「ソフトウェアを利用できるサービスを受ける」と考えられています。
また、SaaS=クラウドサービスと思われがちですが、厳密には異なります。
クラウドサービスには、SaaSを含む様々なサービスがあります。
インターネットを介してプラットフォームを提供する「PaaS」、ネットワークインフラを提供する「IaaS」もクラウドサービスの1つです。
Netflixを始めとするビデオオンデマンド、ゲームソフトのオンライン配信をするSteamもクラウドサービスです。
一方、SaaSは「インターネット経由で利用できるソフトウェア」の総称です。
つまり、SaaSはクラウドサービスの一部ですが、全てのクラウドサービスがSaaSではないと言えます。
ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaS
SaaSには汎用型の「Horizontal SaaS(ホリゾンタルサース)」と特化型の「Vertical SaaS(バーティカルサース)」の二種類があります。
ホリゾンタルSaaSとは、ビジネスチャットや会計ソフトなどの、どんな業界・企業でも共通する機能を提供するSaaSです。
一般的に「SaaS」という場合はこのホリゾンタルSaaSを指すことが多いでしょう。
一方で、バーティカルSaaSは、農業や建築業、医療など業界に特化したSaaSを指します。
例を挙げると、インターネットやデータを活用して農業の効率化を目指す「アグリテック型SaaS」、外来予約の効率化やオンライン診療を実現する「ヘルステック型SaaS」などがあります。
ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSの違いについては詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
SaaSの代表例
SaaSの代表例を見てみましょう。
中にはZoomやGoogle関連などのSaaSという言葉を耳にしたことが無い方でも知っている、または利用したことがあるサービスがあると思います。
・ビジネスチャット:Slack、Chatwork、Microsoft Teams
・Web会議:Zoom、Skype、Google Meet
・グループウェア:kintone、Asana、J-MOTTO
・社内SNS:THANKS GIFT、LINE WORKS、Workplace from FACEBOOK
・プロジェクト/タスク管理:Trello、Wrike、Redmine
・スケジュール管理:Google カレンダー、TimeTree、TeamOn
・CRM/SFA:Salesforce Sales Cloud、eセールスマネージャーRemix Cloud、ちきゅう
・MAツール:Adobe Marketo Engage、Pardot、KARTE
・会計ソフト:マネーフォワード クラウド、freee会計、やよいの青色申告 オンライン
・ERP:クラウドERP ZAC、NetSuite、Ross ERP
SaaSと聞くと遠い存在に感じる方も、サービス名を聞くと「知っている」「使ったことがある」と身近に感じるのではないでしょうか?
SaaSで使用される価格設定モデル
SaaSビジネスを行っていく上で重要なのが、価格の設定です。
ユーザーが製品やサービスを利用するために支払う方法とその金額は、価格設定モデルと呼ばれ、主に6つのモデルに分類されます。
定額価格モデル
1つのプロダクトにつき、1種類の値段を設定する、シンプルなモデルと言えます。
始めに、機能を制限した無料トライアル版を利用してもらい、その後に定額プランに移行する流れが主流です。
料金形態がシンプルなので、収益、解約率などの数字の管理が簡単で、顧客側にも理解されやすい為、売りやすいのがメリットになります。
デメリットは、プロダクトも金額も固定されている為、顧客に合わせたカスタマイズができません。
顧客によっては、必要のない機能も含まれているが、その分の料金も支払っていると不満を抱く可能性があるでしょう。
また、料金が一律であるため、想定以上の売上が望めないこともデメリットと言えます。
使用量ベースモデルの価格設定
顧客側から見ると使った分だけ支払うモデルで「従量課金制モデル」とも呼ばれています。
メリットは、顧客から料金の納得を得やすいことが挙げられます。
全機能を利用でき、金額が上がる要因も事前に把握できるため、顧客にとって分かりやすい料金モデルの為です。
また、「どんなものか、最初は安い金額で使ってみてから検討したい」という顧客のニーズを取り込みやすく、将来的には利用頻度が高くなり、高単価になるという流れがスムーズに作りやすいことが挙げられます。
デメリットは、使うほど料金が加算されてくことがハードルとなって、顧客に利用を控えられてしまう可能性があります。
そのせいで、本来の機能を使えれば解決できた問題も解決できずに、顧客満足度が低下してしまうかもしれません。
また、流動的な料金モデルの為、収益が予想しづらいという点も挙げられます。
階層ベースモデルの価格設定
複数のバージョンの製品を様々な価格で利用してもらう、近年、SaaSで最も一般的と言える価格設定モデルです。
通常、顧客が選択できるように2~4層の価格プランが準備されていることが多いです。
階層ベースモデルのメリットは、使用量によって価格を変えることなく、幅広いタイプの顧客にアプローチをかけれます。
その分、市場を拡大しやすく、収益の可能性を高めることができ収益予測も立てやすいです。
また、顧客に合わせて各層を調整できる点もメリットとして挙げられます。
デメリットとしては、その複数の層が顧客を混乱させる可能性があります。
階層が多くなるほど、顧客の意思決定の複雑さが増し、成約が難しくなります。
心理学に関する有名な論文で、「買い物客とジャムの研究」というものがあります。
24種類のジャムを並べた試食コーナーと6種類の試食コーナーに分けてどちらが購入者が多いか実験したところ、6種類の試食コーナーからの購入者の方が多く、24種類のコーナーと比べて購入者の割合が6倍になる結果がでました。
人は選択肢が多すぎてしまうと、決められなくなってしまうのです。
そうならないために、階層は良く考えて構築し、分かりやすくアピールすることが重要となります。
ユーザーベースモデルの価格設定
ユーザーベースモデルは、分かりやすく、SaaS企業に人気のある価格設定モデルです。使用人数(アカウント数)に応じた課金モデルです。
定額モデルと同様に製品へのフルアクセスを提供するのが通常です。
メリットは、アカウントに追加したい人数に応じて金額が上がるという仕組みが顧客に理解してもらいやすいことです。
また、顧客企業の成長に伴って利益が拡大する可能性が高いことも挙げられます。
企業が成長すると、人員増加の流れが始まり、追加アカウントが増えて、収益が上がるという流れです。
デメリットは、使用量ベースモデルと同様にコストが高くなってしまうため、使用することを思い留まらせてしまう点です。
他のデメリットとしてもう1つ、製品の価値を反映していない可能性があります。
製品へのアクセスを許可するだけの場合、ユーザーは共有ログインを使用するだけという使い方がほとんどです。
顧客の一部は、チームを購入するために複数のシートを購入する必要がないため、ユーザーごとに課金することに対して不満を持つかもしれません。
機能ベースモデルの価格設定
ニーズや顧客分類に合わせたプラン設計が可能で、プラン変更でアップセルが期待できる価格設定モデルです。
階層ベースの価格設定では、様々な機能をいろんな階層で利用できる可能性がありますが、機能ベースモデルでは、特定の機能が全て追加料金になります。
デメリットとして、顧客が追加の支払いに消極的になる場合がある点と付加価値を理解できない可能性がある等が挙げられます。
クレジットベースの価格設定
継続的な利用を必要としない製品を独自のモデルで提供する価格設定です。
製品をサブスクリプションか、1度限りのトランザクションかのどちらかで購入してアプリケーション(サービス)を利用できるようになります。
クレジットベースモデルのメリットは、顧客が実際に利用するかどうかの心配をすることなく、支払いの方法を顧客に提供できることです。
デメリットは、顧客が製品を定期的に利用していない場合は、余剰分のクレジットがあるため、キャンセルか返金を求められる可能性があります。
SaaS、PaaS、IaaSの違いとは?
「SaaS」と「PaaS」や「IaaS」は、どれもクラウドサービスに関する言葉だということは共通していますが、それぞれ違いがあります。
主に、利用者とベンダーの間の責任範囲や、提供されるサービスの範囲などに違いがあります。
PaaSとは
特定のソフトウェアを動かす為のプラットフォームをインターネット経由で提供するサービスです。
主にシステム開発で使われ、自社で用意するよりも少ない時間とコストで、環境開発を構築できます。
Amazon web servicesやGoogle cloud Platformなどが代表的なサービスとして挙げられます。
IaaSとは
IaaS(Infrastructure as a Service)とは、CPUやストレージなどのネットワークインフラを、インターネット経由で提供するサービスです。
クローズドなネットワークを基盤から構成できるため、セキュリティレベルも拡張性も高いです。
その反面、使いこなすためにはそれ相応の知識や技術が要求されます。
SaaSやIaaSと比べて、利用開始までに時間がかかり、料金も高いです。
Amazon Elastic Compute Cloud、Microsoft Azure、Google Compute Engineなどが代表的なサービスとして挙げられます。
SaaS導入のメリット・デメリットとは
ここでは、SaaSを導入するとどんなメリット・デメリットがあるのかを解説します。
SaaSを導入するメリット
簡単でスピーディにソフトウェアを利用することができる。
パッケージ版のアプリケーションソフトウェアを利用する場合は、利用するためにハードウェアやミドルウェアを用意して、アプリケーションソフトをインストールする必要があります。
しかし、SaaSのソフトウェアは、個別の端末にインストールする必要がなく、インターネット環境さえ整っていれば、デバイスを問わず利用できます。
常に最新の機能やサービスを利用できる。
セキュリティの更新やソフトウェアのアップデートは、サーバーサイドで行われるため、ユーザー側や導入企業は基本的に最新のソフトウェアを利用できます。
導入企業側から見れば、SaaSは管理コストの削減にも繋がります。
コストパフォーマンスが良い。
SaaSの多くは、サブスクリプションや従量課金制で提供されています。
ユーザーごとの利用料が決まっていて、人数の変動に応じ、契約プランの変更が行えるため、余分なコストがかかりません。
SaaSを導入するデメリット
セキュリティ対策が必要。
SaaSは、クラウド上で利用するソフトウェアのため、インターネットに繋がっている以上、外部からの攻撃リスクを考慮しなければなりません。
提供側でセキュリティー対策も講じられていますが、利用する側もID・パスワードの管理を従業員に徹底させるなどの人的な漏洩リスクに注意する必要があります。
カスタマイズ性が低い。
SaaSはパッケージソフトと比べてユーザーごとに大幅にカスタマイズが出来ない場合が多いです。
ですので、ソフトウェアのシステムに業務内容を合わせる対応が必要になります。
別のサービスに乗り換える際のデータの移行が難しい。
SaaSには様々なサービスがありますが、そのほとんどは連携性がありません。
そのため、別のサービスに変更する場合、データの移行が難しく、手間と時間、そしてコストを要する場合があります。
SaaS業界への転職は今が狙い目
いかがでしたでしょうか?
ここまで、SaaSの解説から始まり、SaaSの代表例、PaaS・IaaSとの違い、SaaS導入のメリット・デメリットを解説しました。
SaaS業界は今後も伸びていく業界です。理由としては下記が挙げられます。
・インターネット環境があれば利用可能であること
・リモートワークの一般化など、働き方に変化があった近年にも対応できている
・複数人で同じデータや画像、文章を見ることができるので、社内外での情報共有がスムーズに行える
コロナ禍で業績が落ち込みお給料が下がった・・・
自分が今いる業界は10年後どうなるのだろう?
など、皆さんの現在のキャリアに不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
弊社キャリア・エックスでは、未経験からSaaS業界へのキャリアチェンジを多数支援しています。
こちらの記事とともに、皆さんのお役に立てられれば幸いです。