目次
ベンチャー企業で経験や実績を積む方が良い場合
「今より年収を上げたい!」「より大きな仕事がしたい!」などの理由から、また、「とりあえずは」と大手企業への転職を検討する20代の方は多いと思います。ただ、実は、これからの社会で長く働いていく上で必要とされるスキルを身につけるには、ベンチャー企業で経験や実績を積む方が良い場合があります。その理由を、大手企業とベンチャー企業を比較しながら紹介します。
大手とベンチャー、それぞれのメリット・デメリット
まずは、大手企業とベンチャー企業、それぞれで働くメリット・デメリットを見てみましょう。
大手企業 | ベンチャー企業 | |
経済的な安定 | ○ | △ |
長く勤められる安心感 | ○ | △ |
急激な給与UP | △ | ○ |
裁量の広さ、 成長スピードの速さ | △ | ○ |
観点1:経済的な安定があるか
大手企業は、内部留保が多い、財務体制が強固、初任給が中小企業に比べて高い、賞与の回数が確約されている、保養所を始め福利厚生が充実、退職金・企業年金が手厚い、など、一生勤めあげるなら、経済的な安定を保つことができる環境が整っています。住宅ローンを始めとした融資の審査が通りやすい場合も多いです。
一方、ベンチャー企業は、賞与が出る保証がない、退職金制度がない、大手企業在籍なら通ったはずのローンの審査が金融機関側の判断で通らないなどのケースが企業によってはあり、経済的な安定を確保しづらい面があります。
観点2:安心して長く勤められるか
大手企業は研修・教育体制や関連制度が確立しており、それらにかける費用も潤沢で、質の高いものを受けられます。また、組織が大きく社員数も多いため、長期に休業する必要性が出てきた場合に代替要員を確保してもらえるなど、長く働くにあたり安心できる要素が多くあります。一方で、ベンチャー企業はこれらの点が期待できない場合が多いです。
観点3:急激な給与UPを望めるか
大手企業は年功序列で昇格・昇給が決まる風土が残っているところが多く、若手社員が成果・実績を挙げて急激に給与を上げるのは難しい場合が多いでしょう。
一方、ベンチャー企業では、入社後1年で昇格したり、成果が確実に賞与に反映されたりと、年収ベースで見たときに給与を上げやすい企業が多くあります。背景には、能力や成果に見合った評価制度を整えている企業が多いこと、また、大手企業と同規模・予算のプロジェクトがあった際に、社員数が少ない分、携わるチャンスがめぐってきやすい、少ないメンバー数で進めるため裁量の幅が広いことなどがあります。さらに、決済フローが短いために早く実行に移せて実績になりやすい、評価のスピードも、給与・賞与に反映されるスピードも速い、といった背景もあります。
観点4:個人の裁量の幅、成長スピード
大手企業の場合、中小企業にはない大きなプロジェクトに携わる機会はあるものの、一部のトップ以外に決定権が与えられない、プロジェクトの中で実現したいことが出てきても発言権がない、実行に移されるとなっても決済フローが長く時間がかかる、プロジェクトマネジメント的な動きをする場合が多い、など、自律的に動く能力・スキルを養いにくい面があります。
一方、ベンチャー企業には、観点3で述べたとおり、裁量を広く持てる、あるいは速く成長できる環境があります。
このように、大手、ベンチャーそれぞれに良し悪しがあり、大手企業で働くメリット・デメリットの逆が、ベンチャー企業で働くメリット・デメリットとなっています。
では、これらの情報をどう取捨選択し、自分のキャリアにつなげていくとよいのでしょうか。そこで大事になるのが、「将来どうなりたいのか」「これからどのような人材が求められるのか」などについて、長期的な視野で、かつ俯瞰して考えることです。
これから必要とされるのは、知識を知恵に変え、身につけられた人
そこで、次に、今、そしてこれからの時代に求められる人材について紹介したいと思います。
企業が重視する人材について、2011年に独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った調査結果があります(下図)。それによると、これまで育成・確保することを重視してきた人材としてもっとも多かったのは、「職場でチームワークを尊重することのできる人材」(76.2%)でしたが、今後育成・確保するにあたり重視する人材は「指示されたことだけでなく、自ら考え行動することのできる人材」がトップの78.0%で、「職場でチームワークを尊重することのできる人材」は58.3%と数字を落としていました(いずれも複数回答)。
10年近く前の調査でこの結果ですから、今や、「企業に成長させてもらう」「企業と一緒に成長していく」などの依存した考えは通用せず、自らアグレッシブに動き、既存のもの超える新しい発想をしたり、チームを引っ張ったりできる起爆剤のような人が求められていることは明らかかと思います。
「起爆剤のような人」とはどんな人か、もう少し噛み砕いて考えてみましょう。キーワードは、「知識から知恵へ」です。
今は、わからないことはインターネットや書籍で調べれば気軽に知識を手に入れることができます。また、AIをはじめとした各種テクノロジーが、「こういう場合はこうすればいい」などと示唆してくれたり、さまざまなことを自動化できる仕組みもできています。
となったときに大事になってくるのが、「得た知恵をどのように生かすのか」ということです。頭の中の知識をアウトプットして形にする経験を経ることで、知識は実践・実行できる「知恵」に変わる。その知恵を持っている人こそが、今、そしてこれから必要とされる市場価値の高い人材だと考えます。
知識を知恵に変える体験ができるのがベンチャー企業
知恵を持った人材になるには、知識を知恵に変える体験が必要です。その体験ができるかどうかという観点で大手企業とベンチャー企業を比較すると、ベンチャー企業のほうが、知識を知恵に変える経験を若いうちからできるチャンスが多いといえます。なぜなら、先述したように、ベンチャー企業は、大手企業に比べると、若いうちから裁量や決裁権、スピード感を持ってさまざまな仕事・プロジェクトに挑戦できるから。自分で考え、発信したり、実行に移したりといった経験を積む機会が、大手企業に比べると豊富というわけです。
また、キャリアを中長期的に考えた際にも、実績を目に見える形に残しやすいのは、ベンチャー企業です。大手企業でプロジェクトマネジメント的な動き方をしていると、どうしても携わった仕事の実績の見える化、すなわち、その仕事にどこまで自分が介在できたのか、また、成果に対して自分がどう貢献したのかの説明が難しく、応募先企業も評価しづらいため、爆発的な評価は受けづらくなります。他方で、ベンチャー企業では、規模や予算の大小はあっても、裁量や責任をもった仕事ができるため、より高いスキルを得られ、転職においても評価されやすくなります。
もちろん、大手企業の方が向いている方もたくさんいます。ただ、昨今の日本の経済状況や企業で求められていることを鑑みると、知恵を持った人材になるための選択の一つとしてベンチャー企業というのは、おおいにおすすめできる選択肢です。