ある程度の規模の会社には、必ずと言っていいほど存在する営業職。日本の就業人口6747万人のうち811万人(※)を占めており、労働者の約8.3人に一人が営業をしていることになります。(参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構 早わかり グラフでみる労働の今 職業別就業者数)
たくさんの人が営業職に就いている一方、この職種は離職率が高いことでも知られています。なぜ、営業を辞めたいと思うのでしょうか。そして、次のキャリアはどう選ぶべきなのでしょうか。
本記事では、実際に営業経験を活かして転職した人の事例を交えながら、新しいキャリアを考えている営業の方に役立つ情報を紹介します。
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目次
営業職の離職率
日本労働調査組合の「営業職の退職動機に関するアンケート」によると、現在転職もしくは独立するための活動をしている人の割合は約60%、退職を考えている、もしくは考えたことのある人の割合は80%以上を記録しました。
日本全体の離職率は15.0%(参考:厚生労働省 -令和4年雇用動向調査結果の概況-)であり、営業を辞めたいと考えている人がどれほどたくさんいるか、数字を比べるだけでもよく分かります。
営業を辞めたくなる主な理由
“会社の顔”としてクライアントと直接的な接点を持ち、製品やサービスを提案する営業職。成果がダイレクトに会社の成長や自分の評価につながるため大きなやりがいがあります。
一方で前述したように辞めたいと考える人も多くいます。ここではその主な理由をピックアップしていきます。
ノルマやプレッシャーが大きい
営業職は、常に結果を求められる職種です。月次や四半期、年次ごとの売上目標、新規顧客の獲得数など、数字で評価されます。継続的なプレッシャーは、多くの人にとって大きなストレス要因になるでしょう。
たとえば、月の目標達成が危ぶまれる状況では、追加の営業活動やクライアントへのアプローチが必要に。それでも目標未達成の場合、評価への悪影響や上司からの叱責を受けることもあります。
報酬・評価が見合わない
会社の売上に直結する仕事を担うため、仕事の成果は明確に数字として表れます。しかし、会社によっては売上が必ずしも報酬や評価に大きく反映されないケースも。
そのため、「○千万円、○億円を売ったのに、勤続年数が長いけど成果が出ていないメンバーと大差ない給与なのは…」という不満を抱きやすく、それが離職につながる場合もあります。
ワークライフバランスがとりづらい
クライアントの都合に合わせて営業活動を進めていくため、生活リズムが不規則になることもあります。ときには夜遅くまでの接待、商談・展示会の都合で休日出勤などが求められることも。
ワークライフバランスの崩れは、個人の生活の質を低下させるだけでなく、長期的にはパフォーマンスの低下にもつながります。
心身のリフレッシュができないことで、判断力などが鈍り、結果として営業成績にも影響を与える可能性があります。
キャリアの行き詰まり
営業職のキャリアパスは、必ずしも明確ではありません。成績優秀者がリーダーやマネージャーになることは多いですが、特に大きな会社だと「上が詰まっていて昇格チャンスがない」ケースもあります。
また、長年同じ商品や顧客を担当していると、スキルの幅が広がらず、そうした面からもキャリアの行き詰まりを感じることがあります。
新しいチャレンジや成長の機会が限られていると思うと、「このまま営業を続けていていいのだろうか」という疑問が生じることもあるでしょう。
営業自体を辞めたいのではなく、“今の環境”に問題がある?
上述した通り、営業を辞めたくなる主な理由は「環境」によるものが多いようです。「営業は嫌いじゃないんだけど、会社の環境や制度に不満がある」という理由で転職を考える人も少なくありません。
もし「営業は続けたい」と考えるのであれば、職種を変えずに会社だけ変える転職も視野に入れて見ましょう。
例えば、プレッシャーが厳しいと感じれば、ノルマなしの営業も選ぶことができますし、報酬に満足いかないのであれば、インセンティブのある会社やフルコミッションの会社に転職する選択肢もあります。
また、将来性・成長性の高い業界のスタートアップ企業であれば、続々と新たなポストが生まれるので、「上が詰まっていてポストに就けない」と感じる可能性も少ないでしょう。
様々なお客様とコミュニケーションをとりながら、サービスや製品の提案を通じて、課題解決・事業成長などに貢献する。そんな仕事の魅力を手放すことなく、営業を続けていく方法もきっとあるはずです。
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営業職をやめたいと考えたときにやるべきこと
では、営業をやめたいと思ったときには、どうすればいいのでしょうか。すぐに他社への転職に考え振り切るだけでなく、社内での部署異動も合わせて検討してみましょう。
社内異動の場合
上司や人事部門に部署を異動できるか確認してみましょう。たとえば、マーケティングや商品企画など、営業経験を活かせるポジションはいくつか挙げられます。
もちろん会社の事情により、異動が不可能な場合、時間がかかる場合もありますが、転職活動には一定の労力もかかるため、まずは社内異動を検討することも一つの選択肢です。
転職の場合
はじめに取り組むべきなのは、現在の状況を冷静かつ客観的に分析することです。一時の感情に流されてしまっては、判断を誤る可能性が高まります。
以下のような質問に対して、具体的に考えていくことで、自分が置かれた状況の全体像が見えてくるでしょう。
どのような点に不満を感じているか
たとえば、「ノルマが厳しい」、「残業が多い」、「成果が評価されない」など、できるだけ具体的に列挙してみましょう。また、それぞれの問題がどの程度深刻なのかを5段階で評価すると、解決に向けた優先順位も見えてきます。
問題は一時的なものか、構造的なものか
「今月は特に忙しい」といった一時的な問題なのか、「常に高いノルマが課される」といった構造的な問題なのかを見極めることが重要です。一時的な問題であれば、その期間を乗り越えることで状況が改善する可能性があります。
自分の努力で改善できる余地はないのか
たとえば、「営業としてなかなか目標を達成できないことがストレスになっている」という場合、商品知識を自主的に勉強したり、社内研修を受講したりすることで、状況を変えられることもあります。
現職の良い点はなにか
転職を考えているときは、どうしても不満に目がいきがちですが、現在の仕事の良い点も忘れずに挙げましょう。
「顧客から感謝される瞬間がある」、「成果が数字で見えるのでやりがいがある」、「部署に目標となる先輩がいる」など、ポジティブな側面も客観的に評価し、ネガティブな側面と比較することが大切です
これらの質問に答えることで、問題の本質が見えてくるはずです。そのうえで適切な解決方法を検討し、実行することが今後のキャリアを成功させることにつながっていきます。
営業職のまま転職する場合の選択肢
では、営業職自体は続けていこうと考えたとき、どのような選択肢があるのでしょうか。いくつか具体例を挙げていきます。
営業スタイルを変える
・テレアポなどを繰り返すプッシュ型の営業→反響営業
・BtoC営業→BtoB営業
・新規開拓営業→ルート営業
営業手法が今までと異なる会社へ転職することは、選択肢の一つです。一方のスタイルが自分に合わなかったとしても、他のスタイルであれば合っている可能性も十分にあるでしょう。
また、SaaS業界などでは、見込客の育成や案件発掘を担当するインサイドセールス、クロージングを行うフィールドセールス、契約継続やアップセルを担うカスタマーサクセスといった形で、営業プロセスを分けるThe Modelを採り入れている企業が多数。
一つの会社で様々な営業を経験し、自分の適性を見極めるチャンスもあります。
※SaaS業界の営業については、こちらの記事で詳しく書いています。
業界を変える
世の中のニーズやトレンドがスピーディに変化している現在、成長している業界、衰退している業界がそれぞれ存在します。
たとえば、インターネット・スマホがこれだけ普及している中、雑誌などの出版・印刷業界の営業は厳しいと言わざるをえません。また、IoTやロボット技術の発展で、職人の技術を強みにした機械部品会社なども岐路に立たされています。
一方で、業界を問わずDXが推進されているためIT・SaaS業界のニーズは拡大中。成長しているマーケットでは、営業として成果が残しやすいのはもちろん、キャリアアップのチャンスも大きく広がっています。
製品・サービスを変える
たとえば、保険とITサービスとでは、提案する顧客層、想定される課題、営業スタイルなど、あらゆるものが異なります。
扱う商材を変えれば、“新しい自分”を発見できる可能性が十分にあり、周囲からの評価も一変させられるかもしれません。
一つの商材で結果を残せなかったり、不満が募ったりしても、営業職への適性自体を否定する必要はないのです。
事例:転職に成功した人たちの例
ここでは、実際に営業を辞めることなく続けている方の事例を紹介。あなたが共感する部分もあるかもしれないので、ぜひ参考にしてみてください。
金融業界から人材業界へ転職したIさん
地方銀行で法人営業をしていたIさんは、都市銀行などがメガバンクに統合される話を耳にする機会が多くなり、業界の将来性に不安を感じるようになったことから転職を決意。
キャリア・エックスを通じて企業を探し、現在はHRテック会社の宿泊業界に特化した転職支援を行う部署で、キャリアアドバイザーをしています。
新たな環境で働くようになって変わったのは、下記の2点だとIさんは話します。
・前向きな意見を発信、形にできる環境で自発的に動けるようになった
・営業成績ではなく、企業や求職者様のために仕事に取り組めるようになった
主体的にお客様目線を追求できる業務に関われる職場へ転職したことで、自分自身を大きく成長させられたと振り返っています。
※それ以外にも、転職活動を振り返って様々な質問に答えてくださっています。インタビューの詳細はこちらからご覧ください。
法人営業からカスタマーサクセスへ転職したYさん
証券会社とメガベンチャーの旅行部門での法人営業を経て、現在SaaS企業で経理システムのカスタマーサクセスに携わっているYさん。
前職では、事業やサービスの成長性に疑問を感じ、「もっと成長したい、キャリアアップしたい」と考え、転職を決意されたそうです。
すでに退職日が決まっている中、キャリア・エックスのコンサルタントと二人三脚で計画的に転職活動に取り組みました。
現職では営業経験を活かしつつも、経理の知識も求められる環境で「今まで使ったことがない脳みそを使っている感触はすごくある」とのこと。
求めていた成長を実感できている様子で、「やりたいことを掴みにいく選択をしたことには満足しかありません」と話してくださいました。
※それ以外にも、コンサルタントと共に取り組んだことなど様々な質問に答えてくださっています。インタビューの詳細はこちらからご覧ください。
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営業をやめなくても、不満は解消できる
転職する際、選考の合格率や入社後の待遇は経験のある職種を選んだ方が高くなります。つまり希望職種の経験者と競争して、なんとか営業からキャリアチェンジできたとしても、一時的に給与が下がることを我慢しなければならない場合が多いのです。
さらに、営業職は各企業で不足していると認識している職種のNo.1(参考:エン・ジャパン株式会社 2022年「企業の人材不足」実態調査―人事向け情報サイト『人事のミカタ』アンケート―)。現状の不満を解決し、営業職を続けた方が市場価値を磨ける可能性は高いと言えるでしょう。
現在、「営業を辞めようかな?」と検討している人が、この記事を読んで「もう一度考え直してみよう」と思ってもらえるとうれしいです。