SaaSとサブスク(サブスクリプション)は、よく同じ場面で使われることも多い用語ですが、それぞれ違う意味を持つ言葉となります。
今回は、混同されやすいSaaSとサブスクの違いについて、それぞれの概要の説明から始まり、具体的な事例も交えて解説していきます。ぜひ、最後まで読み進めて頂ければ幸いです。
目次
SaaS (Software as a Service)とは?
SaaSとは、端的に言うと、インターネットを通じて利用できるソフトウェアのことです。
「Software as a Service」の略称で、直訳すると「サービスとしてのソフトウェア」という意味になります。
従来では、ソフトウェアが入っているCD-ROMを”1つの製品”としてライセンスを購入し、PCにインストールして利用することが主流でした。
しかし、近年SaaSが普及したことで、インターネット経由でクラウドへアクセスし、ソフトウェアをより柔軟に利用できるようになりました。
従来は購入したパッケージソフトがインストールされている特定のPC以外では、サービスを利用することができませんでした。
しかし、SaaSではPCやスマホ・タブレットなどでインターネットに接続できる環境であれば、どこからでも自由にサービスへとアクセスが可能になりました。
具体的なSaaSについては、後述しますが、例えばGoogleが提供するGmailなどがこれに該当します。SaaSについては、こちらの記事でも詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
SaaSの特徴
ここではSaaSの特徴について、どのようなメリットがあるのか、以下3つの側面から解説します。
システム運用の負荷軽減
すでにSaaSを導入済みの企業でも、別用途のSaaSを提案すれば導入してもらえる可能性があります。
SaaSのメリットはシステム運用の負荷が軽減されることです。何かのシステムを自社で管理して運用していくとなると、サーバー室を設置したりセキュリティ対策をしたりと、莫大な費用や人手が必要になります。
SaaSは、ベンダーがバージョンアップ作業やシステム運用をサポートしてくれるため、システム運用の負荷を削減して、効率よく運用することができます。
特にITに関わりがない企業や自社にエンジニアがいない場合、このようなSaaSを利用するメリットが大きいです。
導入費用が安価
SaaSの利用料金はサブスクリプション方式で、初期投資が抑えられ、安価に利用できるのが特徴です。
例えば、Chatworkでは無料プラン・ビジネスプラン(500円)・エンタープライズ(800円)となっており、1,000円以下でグループチャットから電話まで利用することができます。
また、Kintoneでは、トライアル0円から本登録しても(200円)であり、1,000円以下で勤怠管理や交通費の請求、会社のあらゆる業務をクラウド化することが可能です。
このように従来の買い切り型のソフトウェアと比べて、安価な価格設定になっているため、中小企業や個人でも導入しやすい設計となっています。
アクセスの自由
SaaSはどこからでも柔軟にアクセスできる点も特徴のひとつです。
SaaSでは、提供しているサービスのログインIDとパスワードさえあれば、様々なデバイスからインターネットを通じてサービスへと接続し、利用することできます。
また、インターネットにさえ繋がっていれば職場や自宅のパソコン・漫画喫茶からでも、場所を選ばずに利用可能です。
昨今コロナウイルスの感染拡大に伴い、自宅でのテレワークやリモートワークを促進したい企業には、ピッタリなソリューションといえます。
代表的なSaaS
次に、より具体的にSaaSをイメージしていただけるように、代表的なSaaSについてご紹介します。
Dropbox
Dropboxは、ファイルやクラウドのコンテンツ、ウェブのショートカットを全て1つの場所にまとめて管理できるオンラインストレージサービスです。
ファイルの共有が簡単だったり、自動更新機能でファイルを最新状態にキープできたり、多くの導入メリットがあげられます。
誤って削除したファイルは復元ができるため、重要なファイルの損失を防ぐことも可能です。
Dropboxには、「チーム管理者」、「ユーザー管理者」、「サポート管理者」の3種類の権限設定があり、それぞれの管理権限を自由に設定することができます。
外出が多く、データやファイルを共有することが多い企業にはDropboxがおすすめです。
Chatwork
Chatworkは、国内利用ナンバーワンのビジネスチャットツールです。2022年時点で、Chatworkを導入した企業は33万6,000社を突破しています。
日本製のチャットツールなので日本語でのサポートはもちろんのこと、日本人が見やすく使いやすいデザインになっています。
サイバーエージェントやKDDIなどの大手IT企業もChatworkを導入しています。
無料で使うことも可能ですが、400円のパーソナルプランでは、グループチャット数が無制限になるため、大規模な組織では有料プランが利用されています。
Slack
Slackは、アメリカ発のビジネスチャットツールです。世界中の企業が導入しており、場所を選ばずにチャットをできるのが最大のメリットです。
先程紹介したChatworkと基本的な機能は共通する部分が多いですが、Slackはカスタマイズ性が高く、様々な機能を実装できる点が特徴です。
IT企業を中心に導入が拡大しており、特にエンジニアに人気のチャットツールです。
企業によってはChatWorkとSlackを部署ごとに分けて、導入しているケースもあるようです。
Gmail
Gmailは、検索エンジンでトップシェアを誇るGoogleが提供する無料のメールサービスです。ビジネスだけでなく私生活などでも数多く使われているSaaSの代表格といえます。
メールの送受信以外にも、ビデオ通話など本格的な機能が「完全無料」で利用できる点が最大のメリットで、大容量(15GB)の無料ストレージ付きです。
従来のメールソフトとは異なり、インストール不要で、インターネットに接続できれば様々なデバイスで誰でも簡単に利用することができます。
freee
freeeは、無料で利用できる国内最大手のクラウド会計ソフトです。
個人事業主や中小企業を中心に数多くの事業者に利用されており、2022年3月現在では有料課金ユーザー企業数は31万事業者、クラウド会計シェアは55%を占めています。
また、会計ソフトによる経理業務の効率化支援以外にも、人事労務向けのプロダクトや会社設立・開業支援など周辺領域で幾つものサービスを展開しています。
サブスク(サブスクリプション)とは
サブスクとは、サブスクリプション(subscription)の略称で、英語では新聞や雑誌の予約購読という意味があります。
そこから、月額定額制など一定の料金を支払うことで一定期間サービスを利用できる仕組みの事を「サブスク」と言われるようになりました。
いわゆる「月額〇〇円で動画見放題」といったような打ち出し方をしているサービスがこれに該当します。
例えば、世界的に有名なNetflixやAmazonプライム・ビデオ、日本ではU-NEXTなどの動画配信サービスがサブスクの一種といえます。
近年では、映画や書籍・ゲームといったデジタルコンテンツの分野だけでなく、食品や化粧品・ファッション・車など様々なカテゴリでサブスクリプション型のサービスが増えています。
サブスクリプションの市場規模
国内でのサブスクリプションサービスの市場規模は、ここ数年右肩上がりに増加しており、8,759億円(2020年度)、9,965億円(2021年度予測)、2022年度には1兆円になると予想されています。※1
サブスクリプション市場が急拡大している背景には、消費者の価値観の変化が影響していると考えられます。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査では、「心の豊かさ」を重視する者が増え、「物の豊かさ」を重視する者の2倍以上になっています。
また、「できるだけモノを持たない暮らしに憧れる」について、51.9%が「当てはまる」と回答しています。※2
かつては、ビデオやDVDやCDなどの「モノ」を所有する時代から、現代では若年層を中心に動画や音楽の配信サービスを「コト」として気軽に消費するライフスタイルへと変化し始めています。
カテゴリ別の傾向
特に国内のBtoCのサブスクリプションサービスでは、動画配信と音楽配信の2つのカテゴリを中心に利用者が増加しています。
有料動画配信の利用率は16.3%に達し、うち86.5%が定額の見放題サービスを利用しています。音楽配信でのサブスクリプションの売上高は、音楽配信全体644億円のうち49%にあたる315億円です。※3
※1 出典:矢野経済研究所|サブスクリプションサービス市場に関する調査を実施(2021年
※2 出典:市場規模は急拡大! 国内サブスクリプションビジネス実態調査
※3 出典:サブスクリプションサービスの動向整理
サブスクリプションの課題
昨今、サブスクブームで数多くのサブスクリプションサービスが誕生しました。
便利なサービスが増える一方で、消費者の中には、「サブスク疲れ」する人達も出てきており、不要なサブスクリプションサービスを断捨離する動きも出てきているようです。
具体的には、複数のサブスクリプションサービスに登録した結果、管理できなくなったり、使いこなせずに、徐々に不満へと繋がり、解約に至っているとのことです。
また、膨大なコンテンツの中から自分が求めているコンテンツを探すことに時間を費やし、疲弊している人も少なくはないようです。
そのような状況下では、曖昧なポジショニングのサブスクリプションサービスは解約の対象となる可能性が高く、機能強化や戦略を見直すことで他サービスとの差別化を明確にする必要があります。
今後、サブスクの中で生き残りを賭けた闘いが一層激化してくるのではと予測されます。
SaaSとサブスクの違い
SaaSとサブスクの違いがわからなくなる要因としては、SaaSでは、サービスの課金形態にサブスクリプション型を採用しているケースが多いことから、よく同じ場面で2つの言葉が使われることがあり、混同してしまうのではと考えられます。
改めて、2つの言葉の意味を整理しますと、以下のようになります。
【SaaS】インターネットを通じて利用できるソフトウェアのことで、サービスの提供方法の一種。
【サブスク】一定の料金を支払うことで一定期間サービスを利用できる仕組みで、課金形態・料金形態の一種。
ポイントとしては、SaaSはサービスの提供方法・サブスクは課金形態の一種ということで認識しておくと区別しやすいかもしれません。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事ではSaaSとサブスクのそれぞれの意味と違いについて解説しました。
弊社は、SaaS業界に精通している転職エージェントです。元SaaS出身のコンサルタントも数名在籍しており、経験者の転職のみならず、未経験からのSaaS業界への転職を多数支援しています。
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